田川紀久雄日記
坂東三津五郎は「技芸1ミリでも伸ばしたい」という。この1ミリを伸ばすためにどれだけ苦労をしていることか。私などは1ミリ伸ばすのに一生かかってしまう。1ミリ伸ばしたいという夢の中で芸人は生きている。
詩人が朗読を始めて一年二年でそう変わるものではない。ただたゆまず精進をする中でしか変化がでてこないものだ。これから生涯朗読をしてゆきたいという決意から聲の世界がスタートする。聲が大きいだけならオペラ歌手に負ける。問題は聲の質であると思う。ここには美聲とか悪聲とかは問題ではない。ひたすら自分の世界を構築していくことである。他人がどう思うかは、別な次元の話だ。自分の世界を作れない詩人が、他者を意識するなどもってのほかである。
脳波で動く電動車いすが開発されたという。まるでオカルトの世界のようだ。人間の技術の発展は、本当に人を幸せにするものなのだろうか。何も求めない世界が本当の幸せに繋がるのではなかろうか。物質的な欲望の世界は、人の心を弱くするだけだ。
聲といっても私の場合、身体と精神が噛み合ってこそ聲の力が生きてくるものだと思っている。それは一生の修行なのである。人のために生きたいという大乗の世界が必要なのである。自分を越えた生き方を求めていたいものである。


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