田川紀久雄日記
昨日島村直子さんから朝電話が入った。語りのことをブログに書いたのを読んで、是非島村洋二郎の会場で語りをやってもらえないかとの話である。そして午後二時に画廊に伺うことを伝える。坂井のぶこさんも仕事が休みなので一緒に行って宮澤賢治を一篇語ることにした。「永訣の朝と雨ニモマケズ」を一緒に語るのは四年振りである。抗癌剤を中止してから聲の力も蘇ってきている。島村洋二郎の絵にむけて魂の聲で語りかけることが出来た。私のライブの写真を見ると、語っているときの表情はとても穏やかな顔付である。心が浄化されていたのだろう。
語りが終わって、洋二郎の新しい絵が発見されたものを写真を撮るため写真展に行った時、夫人像裏に、もう一枚の油絵が隠されていた。夫人像を抑えていた板に描かれたフォーブ調の少女の絵である。画廊でその絵を見たとき、会場にいた人たちは驚いてその絵を覗き込んだ。新発見の現場に立ち会った。私の語りと新しい絵の発見は島村洋二郎さんの魂が呼んだのだろうとしか思えない。洋二郎の絵がこのようにのびのびと楽しく描かれていたことに驚いた。長谷川利行と違ったフォーブの絵が日本で誕生したことだろう。でも洋二郎はこのような絵を描くことをしなかった。島村直子さんが「漉林・117号」で私が書いた島村洋二郎の文章を読みたいといったが、その漉林がみつからない。『眼の光』にも掲載されていない。
島村洋二郎展で私は心より本当の歓びを感じた。末期癌者との壮絶な闘いの中で魂の聲を一回でも多くこれからも語ってゆきたいと痛感した。猫の写真集で『東京猫池』横川辰之がある。野良猫の壮絶な生きたドラマが写真として記録されている。傷だらけの猫。その猫が仔を生み、そして死んでゆく。魂を揺さぶられる写真集である。普通猫の写真を美しく撮るが、野良猫のそのものの撮ることは少ない。この前テレビで多摩川のホームレスと猫の映像を見たときも感動した。犬が傷ついた猫の面倒をみる。人間より優しいこころが動物にはある。私の詩語りの聲は野良猫のようだと思う。いのちをかけて生きている。やっと私の本当の闘いが始まるのだ。島村直子さん昨日は本当にありがとうございました。私は島村洋二郎から、本当の魂の叫びを注入されました。生きる勇気も出てきました。会場で聴いてくれた人たちにも感謝いたします。これからももっと精進して生きてゆきたいと思っています。
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